4月にいたpilonidal cyst (毛巣洞/毛巣嚢胞)の18歳男子は、傷床も細長く小さめで、NPWTの期間が比較的短いケースでした。お母さんが甲斐甲斐しくお世話をしてくれている家庭で、フォローアップ・アポイントメントの2,3日前に、お母さんが「もうこれでWound VACからガーゼに替えてもいいってドクターが言うと思う?」と聞いてきました。ガーゼを一日二回交換してくれるのは、大体どこの家でもお母さんです。
「傷も小さめだし、この分じゃ、いいよ、って言うかもしれないけど、貴方は(お母さん)ガーゼがいいの?それともWound VACがいいの?」と聞いてみました。中には、ガーゼだと心配だからもう一週間くらいWound VACを続けたい、と言う人もいるからです。
自分のケアがいたらないせいでインフェクション再び…となったら嫌だ…と言って、wound VACを続けたい、と言うお母さんも中にはいます。Wound VACなら、訪問看護師が来てドレッシングを交換してくれるからです。でも、ほぼ100%の子供達(患者さん達)は、wound VACはもう嫌だ、と言います。
先述のお母さんの答えは、「私は自分のケアに自身が持てないから、wound VACを続けたいけど、彼(子供/患者さん)が鬱っぽくなって、外にも一歩も出ないし、日中も部屋から出てこなくなったので、ガーゼに替えたい。このままでは鬱になってしまう。」でした。
今までの感じからして、一般的に、男の子は女の子よりそういう傾向が強いです。
その18歳男子は、ドクターがOKしてくれて、ガーゼに替えてからみるみる内に傷がふさがり、彼はアルバイトに復帰しました。
そして、今訪問中の17歳の男子は、家庭の事情でご両親が不在です。今後のガーゼ交換は誰が?という状態です。
高齢のおじいちゃんと暮らしていて、Wound VACをつけている間は、不安も大きいと思います。一番年が近くて同じ性別の患者さんが先述の18歳男子だったので、HIPPA(個人情報の漏洩)の規則に触れないように気を付けながら、「他の子はこうだったよ」的な話もちょっとしてあげるのですが、昨日ボソッと「その人(18歳)、鬱になりそうって言ってた?そのあと、実際に鬱になった?もう回復した?」と聞いてきました。
「うん、ガーゼに替えたらどんどん良くなって、鬱にならなくて済んだよ」と言ったら、自分もガーゼに替えたい、とのこと。もうこんなの嫌だ、この3週間どこにも出ていない。とちょっと半泣きになってしまいました。でも、この患者さんのケースは、ちょっとサイズが大きくて、まだ全然駄目な感じです。
外出できないわけじゃないです。wound VACはポータブルですし、チャージしていたら、数時間くらいはACアダプタ無しで、余裕で外出できます。臭いが気になるようなら、なんならキャニスターを新しいのに交換してから出かけてもいいのです。
以前、コンサートに行きたかったのに…とお母さんに愚痴ってた女の子がいました。「行けるよ、コンサート。大丈夫よ。」と言っても、結局行きませんでした。
そういう意味では学校にだって行けるのです。が、どの患者さんも、やっぱり最初の頃は痛みもあることから、学校にはとりあえず最初の2週間くらいは行きません。音はいいとしても臭いが気になるのが嫌だ、と、どの患者さんもそう言います。
でも、そういうことじゃなくて、やっぱり、精神的なサポートをしてくれる人が誰かいるといないのとでは違います。
看護師は、何人も同じような状態の患者さんを見ているとしても、患者さんにとっては自分だけが、そして人生で初めて、その状態でいるわけで、痛みもあるし、鬱っぽくなってしまうのも理解できます。
でも、してあげられることは、痛みを出来るだけ軽減してあげることと、あと2週間くらいかな~、頑張って~、とか応援してあげることくらいです。
今はまだ痛いかもしれないけど、これ皆んなちゃんと治るから、大丈夫よ、あともうちょっとだから、と言ってあげることくらい。
医療現場においては、「絶対」とか、「大丈夫」とか、基本的に言ってはいけないんですが、この病気に関しては、4〜6週間くらいで、ほぼ、治って元気になるので、医師も「はい、じゃ、次(三回目)のフォローアップは、一か月後ね」という感じです。「ええ~、そんな先じゃ、もう治ってる頃だし!」みたいな。医師はそれを見込んでそういうスケジュールにするわけですが…。
そして、事故の手術後、最近皮膚移植をした車椅子の青年。
昨日は、本当に顔が暗くて、カーテンも閉めて真っ暗な中、ただ座って宙をぼんやり見てる状態でした。え、ちょっとこれってやばいんじゃない?ってくらい。
話しかけても、機嫌悪く返されるので、スタッフもあまり部屋に行きたがらず、食事もあまり取らず、部屋から出るのは夕方一回くらいだけ。
でも、スキングラフト(皮膚の移植)の回復は、長期戦…。スキングラフト自体は、まだ1か月位しか経っていませんかい。
ラップトップはいつも開いてるので、インターネットの検索とか可能な状態なのですが、何かを検索している気配はなく、最近はいつも常に白黒の昔のコメディとかが流れています。
というわけで、嫌われるのを覚悟で、昨日、真っ暗な部屋に入ってみました。「皮膚の移植の回復って、長くかかるから…、これからも長いよ。痛みも。でも、フィジカルセラピー、必須だし。今日、やらなかったでしょう。それ駄目だよ。セラピストに会ってみたかったら、ここから探して」と紙を渡しました。イラっとした顔で睨まれるのかと思ったらそうでもなくて「オッケーわかったよ」との返事。オッケーわかった、は言うだけなら誰だって言えるわけで、でも、ちょっとは応援が何かの足しになってたらいいんですが…。
創傷があるせいで、カーテン閉めて真っ暗にして寝てる、という人は他にもいます。痛みを伴うことが多いので、痛み止めを飲むため、眠くなるので朝夕関係なく寝ちゃう、というのもあって、ずっと寝てるような感じの人もいます。
あと、たとえ一時的にでも体が動かないので、悲観的になる人も多いです。
残念ながら、そういう創傷のある患者さんに対する精神的なサポートは手薄な感じで、微力ながら創傷ケアの看護師である自分が…と思うのですが、本当に微力なのですよね…。
「NAMI」というメンタル疾患の人達をサポートする団体があります。全米各地にローカルの支所があり、そこでは、サポートに回る側の人のためのセミナーなども開かれます。
そういう患者さんに対する自分の接し方がいいのか悪いのか、もっと客観的に見られたらと思います。