■ VASHE vs 0.125% Dakin’s solution
(Evaporation rate, pH, 成分, 価格)
患者さん
患者さんは、もともと肢体麻痺で車椅子に乗ってらした方です。腓骨筋の腱周りの感染により、OR(手術室)で腱周りのデブリーメントがなされました。
外科医から出された術後ケアのオーダーは、患者さんが内科医的な病気をいくつも持ち合わせていたことから、0.125% Dakin’s solutionによるwet-to-dry一択でした。腱の保湿がどうとか形成外科的な治療とか、そのようなオプションは却下されました。
術後3日目、両方の足の腱はちゃんと機能しています。なぜ機能しているのがわかるかと言うと、腱がむき出しだから見えるのです。Exposed Tendonというやつです。腱は上下運動しているのが確認できるのですが、肢体麻痺の方なので、基本的に足を使うことはなく、ほとんどの時間、ベッドにいます。
VASHE vs 0.125% Dakin’s solution
ここでは、VASHE と、0.125% Dakin’s solutionの比較をしてみたいと思います。個人的にはどちらの商品も気に入っているし、創傷ケアに無くてはならないものです。
Dakin’s solution by Century Pharmaceuticals Inc.
どちらも透明の液体で、ガーゼに染み込ませて、患部にパックしたりすることで、殺菌効果のある「wet-to-dry dressing」として使用することができます。
比較をしたところで、治療のオーダーが変わるわけではないのですが、疑問を少しでも解いてみたいと思いました。創傷箇所が腱なので、少しでも保湿効果がある方がいいんじゃないだろうか、と思い、「evaporation rate」について見てみました。
Evaporation rateに関する数値はそんなに明確には提示されていないようなのですが(私が見つけられなかっただけかもしれません)、Evaporation rateはboiling pointに反比例する、とのことなので、boiling pointをみてみました。
VASHE solutionのboiling pointは、通常の水と同じ摂氏100度でした (Safety Data Sheet)。Dakin’s solutionのboiling pointは、101度と書かれたサイトがありました。ほぼ同じといったところなんでしょうか。
pH
VASHE: 3.5 – 6.75 (Safety Data Sheetより) (ちなみに通常の健康な肌はpH=5.5。)
0.125% Dakin’s solution: こちらの投稿も見てみて下さい。同商品のSafety Data Sheetだと、ph=10になってます。
最近の投稿:デイキンズ・ソリューション (Dakin’s Solution) = Sodium hypochlorite
成分
どちらの商品も、成分の元になるのは「Sodium chloride (NaCl)」です。なので、どちらもブリーチ的な臭いがします
VASHEは、Water 99.6%, NaCl 0.4%, hypochlorous acid <0.033% (VASHE Wound Solution Safety Data Sheet)
価格
購買価格もどちらも大体同じくらいです($35前後)。医療施設は購買価格がありますが、値段の感じはAmazon.comあたりでもわかると思うので、見てみてください。
VASHE (Amazon.comのサイト)
0.125% Dakin’s solution (Amazon.comのサイト)濃度にご注意下さいね!
以上のことから、二つの商品に著しく差がある点が無いように思えました。どちらもCytotoxicityの無い優れた商品であると思います。
Reference
VASHE Wound Solution Safety Data Sheet. (2021). https://urgomedical.us/wp-content/uploads/2021/06/Vashe_Wound_Solution_SDS_10.05.20.pdf