右の臀部に褥瘡がある70歳代の患者さんが外来に来られました。
来られたのは、右足の潰瘍のためでしたが、臀部の褥瘡がもうかれこれ3か月くらいずっとあるので、ちょっと見て、ということでした。
小さなサイズの褥瘡でしたが、深さがちょっとあって、ステージ3でした。
患者さんが、ずっとつけてるというクリームをポケットから取り出して見せてくれました。「Pressure Sore Cream」というやつでした。臀部なので、自分ではちゃんと見ることができず、でも痛いし、専用のクリームをずっとつけても治らないから相当悪いのか?と心配されていました。
Pressure Ulcer (PU) は、プレッシャーが当たることで起こるので、そのプレッシャーを取り除くのが一番の治療です。というわけで、その旨を説明して、幹部にクッションの役割とドレイネイジ管理のためのドレッシング材を貼って帰っていただきました。「ずっと座っていないで、できるだけ動いて下さいね」とお願いしました。
「クリームつけなくていいの?」と聞かれたので「少なくとも今はつけなくてもいいですよ」と言うと「なんだよ~、せっかく買ったのに~」という反応でした。苦笑
クリームの入れ物には、「皮膚科医推奨」とか、キャッチコピーが書かれていて… 私だって、何か買うとき、そんな風に書かれていたら信じますもんね。やっぱり。
家でドレッシング材を替えてくれる家族がいないので、外来に週二回来てもらいましたが、次の次の回ではその褥瘡は治っていました。
治った後のメンテナンス
そして、その後はメンテナンスです。保守作業ですね。
治ったと言っても、フォームドレッシングは、しばらく貼っておくのが安全です。患部の肌は以前と同じ強さではないので、また開く可能性もあります。それに、生活が急に一変するわけでもないので、同じ個所に褥瘡が再発する可能性は多いにあります。
外来で使用したドレッシング材は、Smith&Nephew社から出ている小さいサイズの「Allevyn」というフォームドレッシングでした。Mepilexの一番小さいサイズでもいいですが、ピンクのAllevynのドレッシングのほうがもっと小さいサイズのがあります。
病院で使用されている2大ドレッシング材です。
Smith&Nephew社から出ているAllevynドレッシング
https://www.smith-nephew.com/key-products/advanced-wound-management/allevyn/
https://www.molnlycke.com/products-solutions/mepilex-border-flex/
どちらもシリコンベースで肌への負担が少なく、シャワーをしてもそのままで大丈夫です(皺ができないように貼ってないと水が入ってしまいますけどね)。ドレイネイジなどが無く、ドレッシング材の状態がよければ、肌の保護目的として、一週間はそのまま貼っていて大丈夫です。
「これと同じ種類でなくてもいいですよ。お店でもフォームドレッシングは買えるので、別のでも大丈夫ですよ」と言ったら、「クリームは何を買えばいいの?」と聞いてきました…。
クリーム…。やっぱりクリームが頭に浮かぶんですね。長い間使用している間に、ある意味洗脳されちゃった感があるんですね。
自分の件
別件で…
私は最近、新しい仕事用シューズを買いました。一日終わって家に帰ったら、小指の横が赤くなって痛かったです。Pressure Ulcer (PU)って、そんな感じでなってしまうものです。部位はいろいろです。顔にも耳にもできます。
娘が「赤くなってるね。何か塗る?クリームとか」と言ってくれました。おお、お気遣いありがとう。ありがとう、なんですけれどもね、やっぱり多くの人は、何か塗る的な発想になるんだな!と思って、興味深かったです。
一番の治療法
PU(褥瘡)は、プレッシャーを取り除くのが一番必要で効果的な治療法です。
クリーム的なものは、肌が健康な状態の時の保守に使用されたら良いかと思います。
一番いいのは、動くことなんですが、時としてそれがなかなか難しい。この患者さんは、肥満の方で、歩くのもままならないので、ハイリスクです。
その後、日本でも同じように褥瘡クリームなるものがあれこれ売られているのかと思って、日本のアマゾンサイトをチェックしてみました。無かった。良かったです。ちょっとホッとしました。