最近、某外科医が「Pilonidal Cystの手術は「Flap+JPドレイン」でいくのが最適だよ」と言っていたのを聞きました。ずっとwound VACが王道だと思い込んでいた私にとって興味深かったです。
今まで何件もPilonidal cystの手術をした十代の患者さんを見てきたのですが、大体どの患者さんも術後はwound VACを使用してきました。Wound VACの使用は、外科医の処方によるものなので、医師が使用しないと言えばしないし、使用すると言えば使用されます。
NPWTで治療した後の再発のケースは少ないのですが、NPWTの使用云々に関わらず、稀にあります。私の知ってる限りで3人いましたが、それらの患者さんに共通していたのは、肥満と糖尿病、高血圧症があったことです。十代の患者さんが大半を占める病気ですが、3人のうち、一人は20代の方でした。
再発の原因は、よくコントロールされていない内科的な状態かもしれないとは思うのですが、外科医の一人が、「術後のVACがダメなんじゃないか。Dakin’s solutionのガーゼパックがシンプルでいいのに。」と言いました。Pilonidal Cystの除去手術は人それぞれですが、結構なサイズのwoundになることが多くて、ガーゼパックになった場合、家族の負担も大きいです。
そこに来て、他の外科医が「Flap+JPドレイン」と言ったので、私もちょっと調べてみました。次のような文献があって、写真付きで説明されていました。
Sinnott, C. J., & Glickman, L. T. (2019). Limberg flap reconstruction for sacrococcygeal pilonidal sinus disease with and without acute abscess: Our experience and a review of the literature. Archives of plastic surgery, 46(3), 235–240. https://doi.org/10.5999/aps.2018.01312. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6536872/
JPドレインも「陰圧療法」です。
「Flap+JPドレイン」でいく利点は下記です。
(1)Flapからの血液や栄養が得られるので回復が早い。
(2)Gluteal cleftの位置が横にずれるので予後が良い。
(2)十代の子供達が術後に学校を休む日数が減る。(理屈的には)
(3)Wound VACよりも手軽である。
JPドレインで学校へ行くの?
自分がJPドレインをぶら下げて学校に行く姿を想像してみましたが…、う~ん、JPドレインは確かにお手軽な感じではありますが、ドレイネイジが入ったコンテナーを下げて学校へ行くのにはちょっと抵抗があるなあ、と思いました。
それに… 術後はお尻が痛いです。学校では、体育座りとか、姿勢的にいろいろな状況があって結構大変です。一人の子は、体育の先生が許してくれなかった、と言って体育に参加させられたと言ってました。医師が書面で説明した手紙を提出しても、先生が理解してくれなかった、ということでした。
また、十代の子供達のなかには、処方されたオピオイド系の薬(例:hydrocodon/acetaminophen) を飲むと吐き気をもよおす子もいて、acetaminophenさえも飲まないで我慢する子もいます。
もし今後、「Flap+JPドレイン」が主流になるとしたら、陰圧閉鎖療法の器具の製造会社は、JPドレインと同じ機能を持つ他の何か… もうちょっとお出かけに適したJPドレインというか…そういうのを開発してもらえたらいいなあ、と思います。子供たちのために…。
例えば… 従来のJPドレインは、立体的で(手榴弾の形)ぶらぶら下がっていますが、もっと平面的で目立たない形とか…。オストミーバッグみたいなイメージ。
う~ん、JPドレインになったからと言って、学校を休む日数はたいして変わらないかもな~、と思いました。でも、この度、「学校は2-3週間休むのが普通」と思っていた自分に対して「どうしてそれを普通と決めつけていたのか?」と自問しました。外科医に「学校を2-3週間も休まなきゃいけないなんて、それはないだろう」と言われて「確かに…」と思いました。