創傷を繰り返す患者さんの共通点

■患者さん(1)40代

■患者さん(2)80代

■患者さん(3)20代

外来のクリニックに、wound careのために繰り返し訪れる患者さんがいます。

患者さん(1)40代

今、通院中のこの方は、11月頃に静脈性潰瘍が治ったばかりでした。

でも、根底にある動脈及び静脈のコンディションが変わらないので、創傷は表面上の症状にすぎません。

この度、全く同じ場所にまた創傷が出来て、治療に来ています。

この方は、途中から、「もう治ったから行かなくていいよ~」と言う電話をしてきて、それっきりでした。そういうわけで、これからどうしていくか、とかの話が出来ませんでした。そこが一番大事だったりするのですが…。

でも、表面上の肌が治れば、別にクリニックに行かなくていいや、と思うのはごく普通の感覚なんだとは思います。

今日は、医師に「まだ若いんだから、手術を受けて、きちっと治した方がいいよ。じゃないと何度も繰り返すよ。こんなwoundをこの先ずっと治療していくつもり?」と言われていて、本人も、やっと手術を受ける気になったようです。

患者さん(2)80代

創傷が治っても、コンプレッションをしたり、肌をストッキング(圧縮ソックス)等で保護しないといけない、と繰り返し言っていたのですが、この方も、治ったらもうすっかり創傷の事など忘れて、コンプレッションをしないでいたようです。

また同じ場所に出来て、戻って来られました。

今週あたり創傷そのものは治るので、百回くらい言って聞かせないと…。毎回、今初めて聞いたみたいな反応をするから、もう…。

患者さん(3)20代

連鎖球菌の感染症で何度も来ているようです。

本人は、若いからなのか、何度も「ただのニキビなんだけど…」を連呼します。どうしてこれをただのニキビと呼べるのか…。

別件で入院中で、部屋を訪れた際、「糖尿病のせいでしょう?」と言うので、「え?違うでしょ。糖尿がある人全員こういう症状があるわけじゃないし…。確かにリスクは高くはなるでしょうけど…。」と言ったら、「だって、皆んなにいつもそう言われるから」とのこと。

糖尿病があると、よく「治らなくてもしょうがない」的な言われ方をすることがあります。

潰瘍が顔に出来ているのですが、耳の方なので本人もあまり見えないからそれ程気にならない様子…。まだ若い可愛い女の子なのに、4カ月もその状態だったなんて、なんか、もうこんなに若いと我が子みたいな感じでいたたまれないです。我が子みたいじゃなくてもいたたまれないですけどね…。

話を聞いていたら、背中にもっとあるのよ、とポツリと言うではありませんか。え?見せてもらってもいい?と聞くと、いいよ、と。見たら、本当に広範囲に渡って…潰瘍が。

今回は、別件での入院なので(怪我)、この生死を争わない肌の症状は取り立てて問題にされませんでしたが(抗生剤も投与されてるし)、ある意味、今の怪我よりも問題にするべき症状なような…。速攻で翌日退院となったので、「頼むから退院後にクリニックに来てね」と念を押しました。

3人の共通点

この3人の患者さんに共通していることは、どの人も、楽天的というか、創傷について、それ程深刻に考えてない感じ。

楽天的なのは、それはそれで、もしかしたらいい事でもあるかもしれませんが、とにかくクリニックに来て欲しい、という思いです。

あと、自分の状況(症状)をそんなにちゃんと理解していない、ということです。だから、大げさに言っているのではなく、本当に、百回くらい繰り返さないとダメなのです。

創傷は、その人の行動パターンによるものも多くあるので(寝ている格好とか、座り方とか)、そういう意味でも繰り返される確率が高いです。

かく言う私も、椅子に正座をしてしまうんですよね…。立ち上がる時、「いやいやいや、痛い痛い痛い…」ってなってしまうのに、またしてしまう。ホント…人の事言ってる場合じゃない、って感じです。