予防医学の大切さは、多くの疾病の発生リスクなどから明確になっています。
でも、アメリカの医療はまだまだ保険がカバーする/しないで左右されるところも多いです。保険でカバーされなかったら、この薬はやめよう、とかこの治療はできないね、という場面もあります。
最近、予防オンリーで頻繁に外来に来られる一人の患者さんの医療費を計算してみる、という機会がありました。
この患者さんは、両足のふくらはぎ部分に感染した潰瘍ができて、ERに来られた際、潰瘍が大きくて、外来でのケアは100%無理ということで、入院に至りました。
潰瘍が完治するまで入院されていたので、だいたい一か月半(約6週間)病院に入っていました。
アメリカの医療費は他国のそれと比較できないくらい高額です。医療システムが違うので、比較してもしょうがないのですが、それでも、その6週間でかかった入院費は、ちょっとした田舎に家が一軒建つくらいの金額でした。う~ん、この説明では、ぴんきりで全然わかりませんね。かなり大雑把に言えば、日本円にしたら1千万円を軽く超える金額でした。
完治して退院された後、この方には、潰瘍の予防のために、外来に毎週来てもらっています。どんな患者さんも同じようにちゃんと来てくださるわけじゃないのですが、この方は、絶対に欠かさずに雨の日も風の日もちゃんと外来に来てくれます。そしてもうすぐ2年になろうとしていますが、おかげ様で一度も潰瘍どころか、skin breakdown(小さな傷ひとつ)ない状態です。
外来に予防のために来てくれなかったら、この方は、きっと1,2か月で潰瘍ができて、またER→入院のコースをたどるのが目に見えています。そして、外来での一回の請求額(保険会社へ)は、日本円にして数万円。毎週毎週外来に来てもらったとしても、入院費用に比べたら、全く低い金額です。
今のところ、保険会社から、「潰瘍もないのに、その治療は保険でカバーできませんよ」というような連絡はいただいてないです。
でも、必要なのは、毎回ちゃんと「この治療は、また起こりうる入院を防ぐために、『medically necessary』なものです。」という記録を残すことです。
外来に来られるのは、潰瘍の予防が目的なのですが、時々、その他の体の不調を訴える時やワクチン接種を受ける時もあって、でも主治医がちゃんといてくれるので、見過ごされることなく平穏無事な2年間を送られています。
予防医学が経済的にも有益であるということを、お知らせできたら幸いです。