オバマ大統領時代に定着した、国民全て健康保険を持ちましょうという政策は、一般的に「オバマケア」と呼ばれます。オバマケアという保険商品があるわけではありません。健康保険を持っていない人は、税金の申告時(TAXリターン)にペナルティが課せられます。そのようなわけで、国民全員が健康保険を持つことになっています。しかしながら、それでもやっぱり健康保険が無い人もいます。
健康保険が無い人が病院や外来へ来た場合には、政府の保険が臨時で支給されることがあります。それは1か月間だけ有効な保険で、その1か月の間に、ちゃんと申請して、臨時の状態を臨時じゃない状態にしてくださいね、と言われます。しかし、人にはいろいろな事情があり、申請できない人もいます。そのまま保険が切れてしまうのですが、それも各自事情があるのでしょう。今日、外来に、そのような患者さんが来ました。
20代の男性で、一見健康そうに見えますが、蛇が中に入っているような大きな静脈瘤が腿にありました。検査が必要なので、今月の初旬に隣の大きな病院の専門医にリファーラルが出ました。でも、なんだかんだ言ううちに、臨時の保険は2週間後に切れてしまう。もともと外来に来たのは、大きめの静脈性潰瘍が足首の上あたりに出来たことでした。
大きな静脈瘤も問題ですが、潰瘍もなんとか治ってもらわないと困ります。でも、今日「保険が切れてしまったらもうクリニックに来られない。」と言われました。外来の受診料は、保険が無かったら自費になり、一回5万円くらいします。彼の潰瘍は、ちょっとやそっとじゃ治らないサイズです。潰瘍の位置的にも、足首の上はとても治りにくい箇所です。
でも、しょうがないです。来られないものはしょうがない。
幸い患者さんはまだ若いので、今日は、Patient educationに時間を長く取りました。こうなったらこうして、こうなったらこうして、という風に、あれもこれも学習してもらいました。今ある潰瘍の他に新しいのが出来ても、なんとか自分でケアできるようになってもらわないといけません。
その他、地域のリソースについても情報をあげて、少しは安心してもらえたようです。諸事情から保険を持てない人が行ける、無料の外来サービスがあります。週に一回、3時間程度ですが、ボランティアの医師達が無料で診てくれます。保険の無い人達は、医療へアクセスできず、健康状態がギリギリになるまで我慢します。そのため、無料の外来に来る人の多くは、比較的症状が進んだ状態の慢性の病気を持っています。上記の男性も、静脈瘤がかなり酷い状態です。
Public Health Nursing (公衆衛生看護) では、このような人達は、vulnerable population(弱者)というふうにとらえられます。