■透析センターでの創傷ケア #109

透析センターから電話があって、透析の患者さんの足になんかあるので見て、と言うことでしたので行ってみました。

行ってみたら、患者さんは、透析の椅子に既に座って透析が始まっていました。見たら、患者さんの左足のかかとに、結構な大きさの(と言っても10㎝くらい)火傷がありました。

これはどうやって出来たの?と聞いても、「わからない」とのこと。車椅子の患者さんで、足(くるぶしから下~足の裏)の感覚もほとんど無いようでした。

足の感覚が無い人は、お風呂のお湯で火傷してしまうケースが多いです、コンクリートの道路を裸足で歩いた、とか(足の感覚が無い人は裸足で歩いちゃ駄目です)。多くの人は(と言っても過去に数人くらいなので、私の感触として。)聞いても「別に何もしていない」とか「わからない」とかの答えが返ってきます。家族が一緒に来ていないと、ほぼ「わからない」になる感じです。

この患者さんの火傷は、深めと浅めが混じった二度の熱傷で、とりあえず、ゼロフォームで覆って、さて…このフォローアップをどうしましょうか、となりました。

ご主人は、透析センターへのの送り迎えはしてくれますが、家での創傷ケアは無理な感じでした。

家族はご主人とその患者さんの二人だけなので、しょうがないので「透析は週に3回だよね。じゃ、透析の日に私がここに来るから、ドレッシングはその時に替えるね」と言ったところ、透析センターの医師が「そうしてもらえたら助かる」と言ったので、「じゃあ、それで」と帰ろうしました。

が、そこで、透析センターのRNから「待った」がかかりました。

透析のエリア内で、創傷ケアとかされると困る、とのこと。

困る、と言われても、私を呼んだのはそっち… っていうか電話したの誰なの?って話になって。

時として血がジョバジョバ床に垂れたりする(透析後の止血がうまくいかなかった時とか)透析センターの透析エリアでは、日本でもそうだと思いますが、PPE (Personal Protection Equipment)として、普通、スクラブの上に、手術室の人達が着るみたいな使い捨てのガウンを着て、手袋は勿論のこと、マスクもアイガード(目の保護)もします。

また、院内感染予防(Infection Control)として、患者さんが使用した椅子や透析のマシンは、使用毎に希釈したブリーチ液(施設によってプロトコルは違います)のワイプで拭いて、次の患者さんに感染の危険が及ばないようにします。

そして、そのような場所で、創傷ケアとかされては困る、ということです。

じゃ、奥の事務用の部屋に空いてる部屋は無いんですか?と聞いたら、一瞬「うーん」となりましがた、答えは「そういう部屋は無い」とのこと。

待合室は、創傷の箇所がたとえ足でも、プライバシーの侵害に関わるから駄目、とのこと。

それじゃ、隣接するクリニックに来たらいいんじゃないですか?と言ったところ、クリニックは待ち時間が発生して透析を始める時間に影響するので透析後じゃないと困る、でも、そうすると、コンタミネイト(汚れた)した創傷を持った患者さんが透析のエリアに入るということなので、それは困る、と。

透析のエリアにクリーンな物体じゃないと入れないということなら、創傷をPPE的なものでカバーすればいいのでは?という質問はナンセンスだろうと思ってしませんでした。

だったら…、創傷のケアは看護師がする仕事の範囲内なのですし(医師だっている)、看護師の貴方が(貴方の患者さんを心配する気持ちがあるのであれば)ケアして下さればいいのじゃないですか?ってことで…。ケアとは、何もドレッシングを替えたりする事それ自体だけではなく、ケースマネージャーとかソーシャルワーカーと連結を図る、とかクリニックに聞いてみる、とか、いわゆるケアチーム的なことです。

この医療システム、何だかどこかおかしくないですか?という感じがしないでもないのですが、結局、私がどうこう言える問題ではなさそうでしたので、「じゃ、もし、また何か私に出来ることがあったら電話下さいネ」と言って帰ってきました。患者さんがちゃんとケアされますように…と思いながら。

悩ましい透析患者さんの創傷ケアでした。