Forensic Nursing(刑務所看護師) と 受刑者のTattoo事情

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Forensic Nursing

「Forensic」という単語は、法医学とか犯罪科学とか訳されたりします。しかし、通常は、「forensic patient」は、「inmate (囚人/受刑者)」 の患者さんのことであり、「forensic nursing」は、囚人に関わる看護の仕事です。仕事の場所は、刑務所であったり、少年院であったり、です。

看護の仕事をしていくうえで専門を考える時、専門看護の領域の1つにforensic nursingというのがあります。専門のコースが設置された看護プログラム(大学院)も存在します。専門のコースでは、実習 (practicum experience & capstone) 先として、警察、拘置所、刑務所、少年院、などがあります。

それらの場所で看護師として勤務するのには、forensic専門の資格は不要です。看護助手 (CNA)、准看護師 (LVN/LPN)、正看護師 (RN)、のいずれの資格でも仕事を得ることが可能です。看護助手と准看護師の間に位置するテクニシャンも勤務しています。病院や施設勤務に比べ、時給が格段に良いため、収入目当てで就職を希望する人は多いです。

大学院でforensic nursing のコースを取ると、他の医療現場と同じように、マネジメントの方に進むか、クリニシャンの方に進むか、のどちらかです。その他に研究専門という道もあります。クリニシャンになる人は、その後、ナースプラクティショナーのコースに進みます。Forensicの専門内で、法廷で証言したり、そのような内容の仕事もあります。

特殊な世界

拘置所や刑務所内の看護は特殊な環境です。常に監視のガードがいますが、それでも気は抜けません。部屋の中での自分の立ち位置を常に確認し、ハサミやペンなどの持ち物にも気をつける必要があります。

施設によって仕事の分担が違いますが、1人の看護師が、医師から出てるオーダーに従って、採血や投薬、各種検査から創傷ケアまで全てをこなさなければいけない場合も多いです。また、拘置所では、逮捕者のバイタルサイン及びアセスメントに呼ばれたり、妊婦受刑者の胎児の心拍数を確認したり、何でもありの世界です。

特殊な世界は医療従事者側だけではなく、勿論受刑者側も同様に特殊です。それに関しては、次のTattoo事情で説明します。

受刑者のtattoo事情

アメリカのTattoo人口は多く、周りを見渡しても何かしらのTattooをしている人は多いです。医療従事者の中にも多く見られます。多くの人は特に問題なくTattooをしていますが、中には化膿して病院の救急に来る人も時々います。

化膿や感染症を防ぐため、通常は、Tattooを彫る際は感染対策 (infection control) がきちんとされた店を選びましょう、と医療従事者側は言うでしょう。しかしながら、こと刑務所内にいる受刑者に関してはこのようなアドバイスがまともに耳には入るは限りません。Perspective gapというやつです。そもそもTattoo shopに行こうなどという考えさえも無い人もいます。

新たにTattooを彫る行為は、刑務所内では珍しい事ではありません。刑務所内には、どの施設にもTattoo職人がそれなりに存在します。受刑者と言えどもお金を持っていますので、お金を払ってその職人に彫ってもらいます。道具はどこから?とお思いでしょう。道具はいろいろなルートで手に入るようです。

お金が無くて職人に頼めない人は、自分で彫ったりします。自分で彫る人は、何を使ってTattooを彫るのかと言うと、ホッチキスの針です。インクはコピー機のインクです。医療従事者の持つ一般的な常識からかけ離れているのですが、そのような特殊な世界もあるのだと思い知らされます。

自分で彫ったTattooは、顔料を差す上皮細胞のレイヤーの深さなどに関しては感覚のみでしょうし、感染防止対策も万全とはいかないでしょうから、化膿する可能性は高いです。また、顔料そのものにアレルギー反応を起こす場合もあります。化膿した際は、抗生物質を貰って治療することになります。度重なる抗生物質の薬の使用は、抗生物質の薬の耐性に繋がってしまったりしますが、それ無しには治療が難しいとなるとやはり必要です。持ってる人から貰ったりして、何錠か飲んで回復すると、そこで服用を止めたりすることも有り得るわけで、それはそれで医療問題の1つです。Wound cultureを取るのは割と高額なのですが、それは医師の判断によります。


このように、forensic nursingの環境下では、特殊な創傷ケア事情に対面します。が、創傷ケアそのものは、通常看護です。