「洗浄って必要なんですか?濡らすだけでしょう?」と聞かれることがあります。
洗浄をする必要がある時
● 明らかに洗う必要がある時(転んで砂利が挟まってる、とか、泥がついているとか)
● SantylやIodosorb Gel等を使ってSloughを取り除くプロセス中の時。Sloughが溶けるのでそれを取り除きます。ステージ3以上の褥瘡に多くみられます。
● ステージ2の褥瘡でも、場所がCoccyx(尾てい骨付近)の辺りだった場合は、便が残っていないか確認します。ちょっとでも残っていると、肌を痛めます。
● Wound VACをアプライする創傷部分に血の塊がある場合(フォームに詰まるといけません。一旦血液が詰まると吸えなくなる場合もあります。)
● 臭いがある場合
洗浄は不要なんじゃない?と思われる場合。でも、基本的に必要
● 傷床が明らかにクリーン
● ドレナージや浸出液が無い
● 綺麗な赤いグラニュレーション組織100%の創傷
でも、パッと見、と実際は、違います。パッと見が明らかにクリーンでも、細胞レベルまでは見えません。綺麗な赤い組織でも、細胞レベルで見たらそこにはバクテリアが存在しているでしょう。だから、基本的に「明らかに…云々」は有り得ないでしょう。
洗浄は創傷面の温度を下げる、という報告も
創傷が治癒していく最適温度は37度とされており、水や生食で洗浄をした場合、その温度を下げてしまいます。洗浄するソリューションが適温になるようにいちいち調整しておく方は基本的にいないと思いますので…。
その下がった温度がまた37度くらいまで上昇するのに、30分から1時間かかると言われています。
温度が下がると、私達が寒い時に身体を強ばらせたりするのと同じように、その創傷部分の酸素量が減ります。酸素は、白血球が細菌と戦うのと同じように、細菌の活動を抑えるのに重要な役割をします。また細胞が新しく生まれ変わるのに酸素は欠かせません。
Sloughに覆われた創傷面を、ガーゼを使用したwet-to-dryのドレッシングで覆うことが時々ありますが、その際、ガーゼの量を調節して、その上からメピレックス等のフォームドレッシングで更に覆う場合があります。
これをすると、ガーゼドレッシングのみの場合よりも、創傷部分の温度が下がることを防ぐことができ、また、ガーゼだけど湿潤環境をそれなりに保つこともできます。
まとめ
毎回、オーダーに、生食洗浄の過程を入れるわけではありません。でも、オーダーに無くても、必要に応じて洗浄します。創傷の状態は日々変わるので、オーダー内容が1~2日で変更になる場合もあります。
特にMed-Surgの入院患者さんの場合は、入院期間が3,4日というケースも多いので、3,4日で結果がある程度出るようにしたりするので、その間、毎日状態が変わったりします。
そして何より…
上記のとおり、いろいろ言ってしまいましたが、基本的には、Agency for Healthcare Research and Quality (https://www.ahrq.gov/) の勧告は「wound cleansing every dressing change」です。
見た感じクリーンでも、目に見えない微生物がそこにはある… というわけで、なんだかんだ言っても、洗浄は必要不可欠なものです。