■静脈性潰瘍の患者さん
■静脈性潰瘍の予防用サプリメント 「やっぱりビタミンCか」
■サプリメントの目的・用途・効能
■静脈性潰瘍の患者さん
外来に、体重が490パウンドの男性が静脈性潰瘍のF/U(フォローアップ)で訪れました。
F/U と言っても、PCP(主治医)からのリファーラルで回ってきた患者さんで、こちら(wound care)では新しい患者さんでした。
490パウンドというのは、キロだと220キロです。
身長は、160cmくらい。となると、BMIは… BMIの計算をする必要がそもそもあるのか?という感じですね。
この日の勤務医は、エクササイズや食にうるさい人だったので、診察中の会話がどのような展開になるかは予想が出来ていて、それを思うと、この患者さんが気の毒にも思えました。
これくらいの体重になったら、痩せろと言われたって、それが大変な事は本人が一番よくわかっているわけで…。
予想通り、患者さんは、「毎日何食べてるの?」「ジュースとか飲んでるよね?」とか、そういう質問を浴びせられて、患者さんからの質問がさらっとスルーされた感じで、終わってしまいました。
■患者さんからの質問 予防のサプリメント
この患者さんは、今日、医師に質問したくて持参したサプリメントがありました。彼にとってはこれは「薬」という認識で、でも、実際にも、それは予防薬的な働きをするものです。
彼がメキシコで医師に「処方」されたこの薬は「phlebodia」という名前で、市場ではVasculeraとかいろいろな商品名で出ています。
原材料はDiosminと言う植物由来の成分で、柑橘類に含まれる(から採れる)フラボノイドという成分です。そのようなわけで、Dietary Supplementとして出ています。
(私にとっては「ダイオスミン」という感じですが、日本語では「ジオスミン」と呼ばれているようです。検索される場合は、ダイオスミンより、ジオスミンで入れると出ます。)
この時点で思うことは、やっぱり「ビタミンC」なんだね… ということです。今、本当に注目されいます。ビタミンCがどいろんな病気にどこまで効くのか、ということ。Drugs.comのサイトでも、用途のセクションに癌の予防や治療に関しても言及されています。
この患者さんの医師(メキシコで)に言われたのは、600mgを一日一回、というものでした。(ちなみに、術後とかの短期の処方はもっとdoseが多いようです。商品によっても服用量はいろいろです。)でも、新型コロナウィルスの関係で、手に入らなくなってしまった(患者曰く)から、このような結果(この患者さんは、Cellulitisを発症してしまい6日間入院しています)になってしまった、とのこと。
これが手に入らなくなってしまったからと言って、Cellulitisがすぐに発症するかと言えば、実際にはそうではなくて、小さなトラウマがあったんじゃないかな、と思われますが、患者さんがそう言うのなら、それはそれで受け止めます。
このサプリメントは、Amazon.comとかオンライン上でも手に入るので、コロナの関係で手に入らなくなった、ということにはならないのですが、そこには患者さんの経済的な理由もあるのかと思います。
医師の処方次第では、このような患者さんの場合は、予防として保険の適用になるかもね、と思います。
■サプリメントの用途・目的・効能
Diosminのサプリメントは、Venous insufficiency, venous ulcerationに効果があるもので、働きとしては、血管の壁の炎症を予防したり抑えたりする、とされています。(drugs.com)
Venous insufficiency は、一生続く症状なので、ではこれを一生飲み続けていいのか?という疑問があります。Diosminの長期の服用に関するリサーチは、あるにはあっても、20年とか30年とかいう長さのはまだ無いので(私が探せなかっただけかもしれませんが)何とも言えませんが、もっと短い期間での、一年くらいの設定の”long-term use”ならあります。「長期」の定義にもよるのですが、今のところは、特に、「長期の服用」によるadverse effect は特に報告されていない、とのことです。
でも、効果は期待できるようです。
ちょっと古いですが、リンクはこちらですので興味がありましたらご覧になって下さい。
Guillot B, Guilhou JJ, de Champvallins M, Mallet C, Moccatti D, Pointel JP. A long term treatment with a venotropic drug. Results on efficacy and safety of Daflon 500 mg in chronic venous insufficiency. Int Angiol. 1989;8(4 Suppl):67‐71.
このサプリメントの用途として、痔の予防があります。(詳細説明 on drugs.com)肛門付近の静脈瘤は、下肢の静脈瘤に通ずるものがあります。
Diosminによって、痒み、出血、術後の出血、分泌物・排せつ物等のコントロール等、症状緩和の効果が期待でき、痔の症状の有無に関わらず使用されるようです。
この患者さんは、このサプリメントの医師からの処方を期待していたようなのですが、この日は叶いませんでした。
そして、体重を減らしたいのはやまやまだが、何をどうしていいのかわからない、とのこと。
とりあえず、体重を測ろう、ということなりました。490パウンドというのは、病院で入院していた際、ベッドで測られたもので、この外来では自己申告でした。病院には、肥満患者さん用の大き目のベッドがあり、通常、病院のベッドには、体重測定機能がついています。
何かをimproveするためには、それを数値化する必要があります。
というわけで、スタート地点として、今の現体重を測ろう… と、思いきや… 外来の体重計は400 lb. までしか測れない物でした…。
もうその時点で、彼は、医師には散々叱られ、サプリメントの話はさらっとスルーされ、体重も重量オーバーで計測できずメディカルアシスタントの女の子達の前でちょっと恥ずかしい思いをして、なんだか沈んでしまったのでした。
venous ulceration は繰り返される傾向があるので、これからどんな感じで予防していくのか、次のフォローアップまでの私の宿題です。