■MRSAと創傷 #154

■前置き(カーバンクルの患者さん28歳女性)

■MRSA

■ERでもらった抗生剤のせい?

■MRSA注意事項

■前置き(カーバンクルの患者さん28歳女性)

3週間前、外来のクリニックに、膝のちょっと下の内側の辺りに、膿が中にあるであろう、直径2㎝くらいの、英語で言うところの「carbuncle」がある患者さんが来ました。

内科の先生に呼ばれて行ったら、それだったので、「ああ、これは外科医の先生に切ってもらわないと…」とReferralを回していただきましたが、その日はあいにく外科医が忙しく、患者さんは、待っていると粘りましたが、無理で、Dakin’s solution でケアをして帰っていただきました。

そして、中を端折りますが、結果的には、翌日、そのwoundは、ORで外科医の先生がI&D (incision & debridement) で除去しました。(それが3週間前)

(ORでやる程のことなの…?と思うけど、この外科医はどんな小さなのも、手術室のスタッフを集めてORでやってしまう…)

I&D後は、創床も綺麗に平らになって、ORで生食のwet-to-dryでwound care するように、との説明を受けたようです。

今日はそのフォローアップでした。

3週間経っているのだから、2㎝の創傷は今日あたりはもう閉じているだろうと思い、クリニックの外科医のアシスタントの人に、「きっともう治ってる筈だし、私は不要だと思うから」と予め連絡しておきました。

まだ20代の若い患者さんなので、栄養も元気もいっぱいで、治ってなかったら変…てくらい。

そしたら… 治って無かったです!

「閉じてないらしいよ~、というわけで、クリニックに来て」と電話が来ました。

2㎝の傷が3週間経っても治ってないってどういうことだろう…と思いながらクリニックに行きました。何故に治ってない… (の続きはこちら。)

■MRSA

最初にクリニックの内科医に呼ばれた際、内科医も「何だかひどそうだよね。カルチャー取ろう」と言って、内科医自らカルチャーを取ってくれました。

その後、外科医の方に引き取ります、と言って、外科の方に来られた時点で(翌日)カルチャーからMRSAが判明していました。

MRSA(マーサ)というのは、Methicillin‐Resistant Staphylococcus Aureus(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の略で、特定(ペニシリン系)の薬に耐性の遺伝子を持った菌です。

創傷等の治療に抗生物質が必要な際、効く薬と効かない薬(耐性があると効かない)があるため、選択が狭まります。

この患者さんも、クリニックで内科医に診てもらったのが最初ではなくて、その前にERに来て抗生物質を処方してもらっていました。

ERでは、カルチャーを取っていなくて(その時点では、woundというよりは、肌のちょっとしたinflammationくらいだったようです)、一般的に何でも幅広くカバーするであろう抗生物質、というのが処方されていました。

こういう経緯があった後に、クリニックで外科医に「MRSAっていうのは、過去の抗生物質の服用が原因だったりする…」という説明を受けてしまったものだから、もうERを責めて大泣き…。

ERで出されたあんな効かない抗生物質のせいで、私はMRSAを持つことになってしまった… と言って、ずっと泣いています。家族も一緒で、ほとんど、もう訴える、みたいな勢いで泣いていました。

あんまり泣くので、この時点で外科医は「任せた…」と言って、引っ込んでしまいました。

■ERでもらった抗生剤のせい?

家族(お母さん)も、娘がMRSA持ちにされて、黙っていれないわ、という勢いで怒っています。ティッシュを渡して、ちょっと落ち着くまで、と私も部屋を出ました。

MRSAの菌をもらう可能性は、いろいろな場所にあります。中でも、施設や、刑務所、学校、大家族など、人との接触が多い場所などでは菌をもらう可能性も高くなります。

この女性の勤務先は、地元の小学校です。発達障害等で援助が必要な生徒のお世話をしています。

病院や医療施設以外でもらった菌の場合、それを「Community-acquired」MRSAと言います。

過去の医療履歴を調べたら、入院の履歴はありませんでした。

が、ERを訪れる2,3週間前に、顔面の筋肉が原因不明でダランと下がってしまう症状で、同クリニックを訪れた履歴がありました。

これは、Bell’s Palsy と診断されました。Bell’s Palsyは、原因はよくわかっていない、となっていますが、バクテリア感染による可能性も多く示唆されていて、それを考えると、この患者さんの足の炎症は、ERを訪れる前からのものだったのでは、と考えらえます。その後、患者さんは泣きも収まって落ち着いて、なので、この件を話すことはありませんでした。それに、そういう内容は、私が言うべきことじゃない、という方が大きいです。

■注意事項

創傷箇所は、テープで貼ったり剥がしたりの繰り返しが肌に負担をかけるというわけで、最初はAceWrapでドレッシングを抑えていたのですが、どうやらORでのI&D後もずっとそれをしていたようです。が、これ一体いつまでするの?と患者さんがクリニックに電話をかけてきたらしくクリニックから電話が来ました。

クリニックからの電話で、「いつまでカバーしてればいいのか、って聞いてきてるんだけど…」ということだったので、「治るまで。MRSAだったし。でも、グルグル巻きじゃなくていいよ。その部分がカバーされてればいいから。」と言ったのですが、「なんか、空気乾燥させているらしいよ」と言うので「え~」とびっくりしました。

MRSAが出た患者さんには、病院のプロトコルとして、医師からは口頭(や印刷物で)で注意事項を伝えて、看護師からは印刷物が医師から出されていない場合は印刷物を渡して説明をする、というのがあります。

医師もそれをしたし、私も、印刷物を渡して、重要事項にハイライトもして患者さんと家族と一緒に読んだのにも関わらず、「空気乾燥がいいって周りに言われるのでそうしてる」とか言っています。

そうか… そこを強調しないといけなかったのか… と思いました。「周りはいろんなことを言いますが…」というところ…。

人はとかく周りの人の意見の方を聞く傾向にあるものです。

MRSA保菌者には、手を洗う、タオルを共有しない、などのいろいろな注意事項がありますが、wound care の私が強く言いたいのは、どんな傷も(小さくても)あったらカバーしてください、というラインです。特に周りに人がいっぱいいる環境では、自分の周りの人を守るという気持ちでお願いしたいです。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする