去年あたりから、うちの外来のクリニックには、痛みの専門医がいて、慢性的な痛みのある患者さんは、専門医へ回されます。
最近は、鎮痛剤の処方、特にオピオイド系の鎮痛剤の処方についての監査が厳しいのだそうです。外科医は、術後の痛み止めの処方をした後に、患者さんが慢性的に痛みを訴える場合、専門医にお願いします。
昨日、外来に、足の甲に深目のトラウマwound (ぶつけた結果の裂傷とかそういう系の) が出来てしまった患者さんがフォローアップで来て、その際、「痛みはありますか?」と聞いたら「No」と答えました。
もうサイズも大分小さくなって、浅くなってきて、それほど高齢の方でもないし、このまま順調に治るだろうから、そんなに心配しなくていいような患者さんでした。
痛みもそれほどあるようにも見えないようでしたが、その後、独り言のように、ボソッと「痛みは無いけど、痛み止めは貰ってるから飲むけどね」と言いました。
「飲んでないと痛むんですか?」と聞いたら「さあ、わからない」とのこと。
薬は何?と聞くと「タイロノール4」ということでした。
タイロノール(Tylenol)は、アメリカでは、ジェネリック名をアセタミノフェンまたはアセトアミノフェン (acetaminophen) と言います。ヨーロッパ―ではまた違う名前があります。
医療施設では、Tylenolは、痛みの他に、熱がある場合にも使用されるので、痛みがある場合用と、そして熱が出た場合用とで別々のオーダーが出される場合が多いです。通常は「PRN=as needed」で出されます。
一般的にも、市中のドラッグストアやグロセリーストアの棚に置かれているOTC (over the counter)の鎮痛剤で、ごく普通の痛み止めです。
が、これに、2、とか、3とか4とかつくと違います。
2,3,4の数字が後ろに付くと、それはTylenolにコデイン (codeine)というオピオイド(麻薬性鎮痛剤)が合体した薬です。結果、オピオイド扱いになります。
コデインだけでモルヒネみたいに痛みに効くのですが、タイロノールと合体すると鎮痛作用の効率がいいから、というのが合体する理由のようです。(コデインだけの錠剤も存在はします。)
コデイン (codeine)は、モルヒネ (morphine) と同じような鎮痛作用の他、咳を沈めたりする効果があります。なので、使用時は、他の鎮痛剤使用時と同様に、呼吸数に気を付ける必要があります。 呼吸数は、通常一分間に16~20(大人)、15以下だとちょっと少なくて、12以下になったら危険です。10を切って意識もあれ?となったら速攻ERに行きましょう。
後ろに付いている数字は、それぞれ、次のようになります。
2=codeine 15 mg
3 = codeine 30 mg
4 = codeine 60 mg
これが、acetaminophen 300 mgに合わさります。ちなみに、お店で売られている「Regular strength のTylenol」は丸い錠剤一錠が325mgです。
そして、ニックネーム的に、タイロノール#2、タイロノール#3、そしてタイロノール#4と呼ばれます。(#=ナンバー)
でも、この患者さんのタイのロールは、一番上の「4」でした。あまり痛みも無さそうでしたが、「とりあえず手元にあるから飲んでる」ということでした。
Refillも厳しい鎮痛剤は、「Refill=0」になっていることが多いです。次の痛みの専門医との予約時に必要ならまた処方されます。不要なら処方無しということになります。