■アメリカのプライマリケア医 (PCP) #97

高齢になると、高血圧病、心臓病、糖尿病、COPD、等々いろいろな併存疾患が出て来て、患者さんは、何人もの違うドクターにかかっている場合が多々あります。

でも、それぞれの専門医に診てもらう為には、プライマリケア医に紹介状(Referral Order)を出してもらう必要があります。

プライマリケア医とは、PCP、Primary Care Physicianのことです。主治医というやつです。

最近ではPCPを探すのもちょっと難しくなったようです。何故ならば、政府系(州の)の保険を取らない(その保険を持った新しい患者さんを受け付けない、という意味)というPCPが増加しているからです。政府系の保険(主に低所得者向け)は、提出書類のきまりが厳しく、それに時間がかかり、しかし、その割にはリターンが少ないということで、個人経営の医師は特に取らない傾向にあります。

そうするとなると、患者さんは、カウンティや病院のクリニックに行くことになり、そこがてんやわんやの混み様になってしまって、PCPがとても不足してしまう状況が生まれます。

今日クリニックを訪れた創傷のある患者さんは、創傷があるのでWound careのF/U(フォローアップ)で来られました。

この患者さんは、その他にも、関節リウマチ、糖尿病、高血圧病、肥満、などがあり、この度(先月あたり)、入院をしていたので、退院をきっかけに、PCPを病院のクリニックにしたい、ということで、初めてPCPをestablish(主治医との関係構築みたいな感じ) するということで一昨日予約が入っていました。

PCPもいきなり創傷の患者さんが来たらびっくりするだろうと思い、創傷のケアは、外科医と私でするので、そちらの予約は●日です、と、今までの経緯をざっくり説明しておいた筈なのですが…

今日患者さんが言うには、PCP的には、リウマチだの糖尿だの肥満だの創傷だのがある患者はあまり受け入れたくなかったみたい、痛みがある、って言ったら、痛み止めは出してくれなくて、その代わり、Painのドクターに回された、とのこと。

そして、Painのドクターに行ったら、リウマチの痛みに関してはリウマチのドクターに聞いてくれ、と言われたようです。

病院内では(入院時)、担当の内科医が総合で診てくれるのですが、退院しちゃうと、もうバラバラで、患者さんは困ってしまいます。

各専門医が薬を1種類か2種類出したとしても、専門医4人もいたら薬の数は増えるばかり。そして、薬同士のインターアクションなどお構いなし…になってしまいます。このように、特に高齢者に多いのですが、1人の患者さんが何個も何個も薬を併用することを、「Polypharmacy」と言います。

それを総合的に見るのがPCPの役目だと私は思っていますが、必ずしもそのようには物事が運ばないようです。

Poly-pharmacyを問題として提示するのなら、医療システム側は、医療システム側でそれを解決に導く必要があるのですが、そこには大人の事情も絡むようで…なかなか解決には至りません。

以前訪問看護した患者さんで、90歳台の方がいて、その人は、定期的なPCP訪問時に、全ての薬を持参して、報告して、薬を総合的にチェックしてもらっていました。それが正しいと思います。

しかしながら、全ての患者さんが、そのようにしっかりしているわけではなく、それは、本来ならば、医療システム側がするべきことだと思います。

今日の患者さんは、足の痺れに対して、以前からギャバペンティン(Gabapentin)という薬を取っていたのですが、今日聞いたら、退院と共に薬のリストから消えていて、もう一度出して欲しい、とのこと。

PCPには断られたそうで… 。その薬を創傷ケアの所では出せないので(というか外科医は創傷見たらさっさと退場してしまっていた…)、Painのドクターに聞く、ということになりました。PICが駄目と言ったのには何か理由があったかもしれないのですが、患者さんはそんなことはわからないし、混沌とした状態という感じでした!

以前、「鎮痛剤と創傷の治療」の所でも書きましたが、担当医や主治医、専門医の連結というのは本当はとても重要なのですが、これがうまくコラボ出来ない場合が多々あるのが現実なのです。

患者さんをそのような状況に置いてしまい、本当に、病院に代わって謝りたい。

Gabapentinの件は、割と次々とアポイントメントが入ってるようなので、納得がいく回答が得られるまで、会うドクター全てに質問してみよう、と言って帰られました。

アメリカの医療システムの、あまり良く機能していない部分です。今後の課題かと思います。